BPOサービス(三井生命がIBMに委託)


三井生命は、保険事務の運用をIBMに全面委託するそうです。日経新聞2月22日号が大きく掲載していました。日曜刊記事ということもありますが、4年前からシステム運用のアウトソーシングをしていますので、何を今更と思いつつ読みましたら、BPOサービス(IBM流ではBTOサービス)だというので、ようやく本格的なBPOが出現したと三井生命の決断に驚きました。

BPOについては、当コラムでも数回取り上げていますが、IT運営だけのアウトソーシングでは、ビジネス・ソリューションにならないことが多いので、BPO化が必要だと申しあげてきました。ただし、ITアウトソーシングでも企業としてのコアコンピテンシーを失うことがありますから、BPOとなれば更に失うものが多いことも確かです。経費効率だけで経営判断できないのは当然ではあります。

三井生命は、IBMと折半出資でNBCカストマー・サービスを設立しました。資本金は1千万円ですので、IBMに値引き手段としての出資意図は皆無でしょう。人材・資金を含めたパートナーシップを明示するのが目的でしょう。三井生命からは千人、IBMからは30人が派遣されるそうです。委託業務は、契約変更、保険料管理、各種問い合わせ業務など保全全般を委託するとのことです。IBMは、電子伝票化(ワークフロー化)やコールセンターIP電話化などで先端技術を活用して、BTOのTであるトランスフォーメーション(革新・変革の意で、日本では馴染みのない用語ですが、IBMが10年以上前から好んで使う言葉)を追求するようです。

委託費用は、10年間360億円で、その間に50億円の経費削減になると言います。ということは、現在年間40億円前後要している業務ということで、三井生命にしては随分と小さい金額です。金額から判断する限りでは、コールセンターの外注程度とも思えます。勿論、千人の出向社員の人件費は本体負担です。こう考えると、三井生命がどこまで本気でBPO化を決めたのか、とりあえず一部を実施して、効果を見つつ順次範囲を広げるということだろうと推測しています。

金融ITは、業務とITを分断しすぎ、ITも企画・開発・運用・保守を分断しすぎた結果が、ITがビジネス・ソリューションと遊離してしまったと筆者は考えています。とはいえ、1970年代の第二次オンライン後に金融機関に入社した人々は、事務の基礎や詳細を知りません。全てがプログラム化されてしまい、操作マニュアルに従って画面操作するだけです。エンジニアにしても、入社早々からコ−ディングやらテストばかりでコンピュータの基本原理が体に染み込んでいるわけではありません。先端テクノロジーの話をしても、若いエンジニアは用語だけで理解した顔をしますが、60歳を超える先輩達は、しつこく原理を聞いた上で、具体的な使い方を提示してきます。効果の少ない研修を行なうよりも、PCDP(パンチカード・データ・プロセシング、この言葉を知る人も少ないでしょう。)のハンズオンでもやった方が、応用力のある技術者を育成できるでしょう。

生命保険業務も同様です。リアルの事務を知っているのは本社勤務の業務職と言われるパート女性陣の一部です。超長期の勤務経験に基づいて、大学卒の総合職を育成指導しています。彼女たちと基礎・応用力を持ったITエンジニアが協業すれば、理想的なBPOサービスが実現するでしょう。それが、三井生命だけでなく、他社の事務も処理できるようになれば、後は学習効果を生かした先行者一人勝ちが実現します。業界全体としては、生保保全に関する総コストが低減できますし、サービス・レベルも上がりますし、IT産業に新しい事業機会を提供することにもなります。

今回の発表が単なるBTOサービスという名称の売り出しに終わらずに、明確な戦略と事業計画に基づいたものであることを願うばかりです。