アウトソーシング(りそな銀行とNTTデータが基本合意)


1月27日りそなグループの細谷会長は記者会見で、統合システムとしてのあさひ銀システムの開発・運用をNTTデータにアウトソーシングすると発表しました。

私には寝耳に水でしたので、大きな驚きとともに何故?と思った次第です。昨年末の当コラムで統合システムを大和銀シスからあさひ銀シスに変更する決定に対し、大きな懸念がある(もっとも懸念のないプロジェクトは存在しません)とコメントしましたが、その頃にりそなグループが複数のベンダーに外部受託の引合をしているとは想像もしませんでした。合併発表後、人材が流出した旧あさひIT部門が遂行しきれるかという懸念はありましたが、新たに別会社を設立してあさひ版D&Iも作るとは。混乱を増幅する結果にならなければ良いのですが。

マスコミの方々からの情報では、りそな提示の料金を満たしたのはNTTデータだけだったようです。IBMではよほどの理由がない限りは赤字ビジネスは受けられない仕組みになっています。それにしても途方もなく安い料金とのことです。最近、ある大手ベンダーが競合他社より数段安い価格を提示し続けています。コストを抑えられる根拠は何も見えないので、他ベンダーが「どうして、あんな金額を出せるのか?何を考えているのか?」と聞いてきます。私は「閉店セールでしょう。」と応えていますが、データまで始めたのかという印象です。他の顧客銀行も良く研究すれば、値下げの余地があるかもしれません。とは言え、昨今のSIerの営業利益率は23%以下が多いのが実状です。実質赤字の山です。更なる値下げは、彼らの事業継続を困難にしかねません。

データとしては、横展開が不安視されている地銀共同化を補充する施策としたいのかもしれません。始めての都銀クラス基幹系の受託というイメージアップ効果も期待しているのでしょう。あるメガバンクの幹部は、「IBMはうまいこと逃げたな。」と言いますが、IBMのりそな担当チームは社内で苦境に陥っているでしょう。IBMとの関係を余りに悪化させると、ワールドクラスの金融動向情報や先進技術情報も入手が難しくなります。将来ともに全分野二番手以降戦略を取るのであれば、さしたるデメリットではないでしょうが。

次に、IBM機での銀行オンラインの経験のないデータがどうノウハウを継承するのかという問題があります。あさひ銀技術者が地銀のようにデータ技術者に任せきりになるはずはありません。結局はIBM技術者も参画することになるのでしょう。電々ファミリーのベンダーであれば、料金を顧客銀行から直接もらうか、データ経由でもらうかの違いと割り切るでしょうが、IBMとデータでは、企業文化も仕事の仕方も違いすぎます。正規料金を払えば、IBMはサポートするでしょうが、それではデータが財務的にもたないでしょう。

りそなとしては、少なくとも担当部門は、随分と悩んだ結果、経費削減額で決断したことだと思います。経営陣に、勘定系システムは事務体系であり、企業文化であり、経験ノウハウの集積であるという認識がないのが辛いところでしょう。共同化やアウトソーシングという方法で、自社が本業とする業務を業務プロではない外部IT集団に投げることによって、失われる技術・ノウハウは未来永劫回復不可能です。最も重要な経営資源を外だしすることの危険性に関しては、最近ようやく地銀経営者の間でも気づかれつつあり、複数の頭取が見直しを考えています。ただ、今となってはベンダーや共同他行へのペナルティ金額が大きな制約となっています。

りそなは、データとの契約期間を7年と想定しているようです。つまり同グループは、7年間は根本的かつ先進的機能アップは出来ないでしょう。競合他行としては、狙い目です。みずほグループも、来春までには統合が終わる予定で、その後は新規案件の開発が目白押しと聞いています。業界は2006年にかけて急速に環境変化します。窓販全面解禁、信託会社法改正、新BIS,ペイオフ解禁等々です。ITを単なる事務処理マシンと捉えたり、不必要なまでの戦略性イメージを期待することの危険性がピークに達する時期です。この期間を、りそなはNTTデータと組んで、グループ各行の移行、統合に勢力を使うことになります。D&IとIBMは、信託業務の注力することになるそうです。信託業務ではSTBとの協業が進んでいますが、利益の出ない資産管理系業務だけのことで、運用系や顧問業務などの戦略業務は自前で推進せざるをえません。それすらも失う場合は、ただの地域銀行集合体になってしまいます。

当コラムでも何度も申し上げましたが、市場化する金融ビジネスでは、装置産業的なIT利用は相対的に比重を下げつつあり、個別案件対応の寿司屋カウンター型IT活用の時代になっています。スピードと個別対応が命です。そのケイパビリティを確保維持する仕組み作りこそがIT戦略の命題なのです。財務上の制約から、そんな贅沢は言っておれないと返されれば、当事者でない私としては黙るばかりであります。