プライベートバンキング(大和証券と東京三菱銀行)

日経新聞1月4日号の記事です。大和証券が今年の夏からラップ口座を開始予定とのことです。大和だけでなく日興も野村も予定していますので、ようやく本格化するでしょう。

ラップアカウントに関しては、当コラムでも二度ほどご紹介しましたが、個人向けの投資一任業務です。運用残高に応じた手数料(1〜3%が相場)で、投資顧問・売買執行・口座管理などを全て請負います。以前は、投資一任勘定への参入規制が厳しかったことと、ラップ業者の利益相反行動を抑止するために自己売買記録の全面開示という厳しい条件がありました。それが昨年の証取法改正で、大幅な規制緩和が行なわれたので、参入機会が出てきたということです。こうした動きを読んで、ネット証券などでは売買仲介手数料プール制などの新しい手数料戦略を試行しています。

筆者は、金融サービスで収益を提供する顧客層は大口顧客かハイリスク顧客だと思っています。日本の金融機関は、顧客を取引額と人口のピラミッド構造で捉えています。それをニッパチ理論と合わせて、下位顧客層は上位顧客の予備軍だという認識です。結局は、どの層の顧客にも同じような商品・サービスを提供してきました。ところが、大手証券会社の場合は、3%の顧客が60%の営業収益を提供しています。顧客セグメントでみたコスト対収益バランスは余りにミスマッチです。これまで優良顧客が良く我慢してくれたものだというのが実感です。

加えて、顧客資産成長論にも疑問が出てきます。年収400万円の顧客が10年後に1千万円になるのを待つのも良いですが、顧客のロイヤリティはそれほど高くありません。ましてやダイレクト・チャネル化が進めば、ますます顧客は価格条件や商品・サービス条件で金融機関を簡単にスウィッチします。解約するのはまだ良い方で、睡眠口座になれば維持コストが発生するだけです。つまり、金持ちになったら、あの金融機関の客になりたいという存在になる必要があります。

大和証券は、数年前からセグメント別マーケティング戦略を展開してきました。銀行とはセグメントの切り口が違いますが。その具体的な商品・価格戦略一つがラップなのでしょう。間違えると単純な手数料割引で終わりますが、うまくいけば、証券業界の長年の悲願である資産管理ビジネスが実現します。アドバイス、口座管理事務サービス、情報提供などのサービス・ミックスをグループ企業・アライアンスと共同で提供することになるでしょう。ITと専門家の調和の取れた組合せがポイントでしょう。ナレッジベースなどと称して、専門家の思考や活動を制約すれば逆効果です。

日本金融通信社のITソリューション関連誌であるFIT2004年冬季号に、東京三菱のアグリゲーション・サービスが紹介されていました。準富裕層向けに「東京三菱ウェルスパレット」というサービスを2002年11月から試行しているそうです。そのサブメニューです。昨年1月に当コラムで東京三菱のアグリゲーションに関する記事を紹介しました。2003年春からアグリゲーションをサービスインするという内容でした。アカウントワンというアグリゲーションのASPを通じてダイレクトチャネルサービスと連動させます。

預り資産1千万円以上の準富裕層に対象を絞っているのは、同行が注力するPB強化策であることは勿論ですが、来店やインターネットバンキングなどでは難しい複雑高度なサービス・チャネルを開発する目的があるようです。確かに富裕層は訪問チャネルですし、一般のダイレクト・チャネルではマス顧客と同じになってしまいます。現在のウェルスパレットのサービス内容は、資産レポート、アラートメール、各種FPメニューなどで特別なものはありません。パイロットで使い込みながら、メニューの拡充、操作性の改善を図っていくのでしょう。

ダイレクト・チャネルも顧客セグメントに合わせたサービス・ラインを揃える時代に入ったようです。これまでのダイレクトチャネルは、優良顧客を遇するレベルではありませんでした。富裕層の中心である高齢層を冷遇してきたと言えるでしょう。