地銀の基幹系システム・オープン化(百五銀行)


日経新聞12月1日号の一面にマイクロソフトが百五銀行からウィンドウズによる次期基幹系システムを受注したという記事がありました。

この日は、イラクでの外交官殺害や足利銀行国有化という大きなニュースがあるにも係わらず、一面でしたのでさぞかし衝撃的な計画だと思ったのですが、ただウィンドウズをインフラに使うというだけの内容でした。一瞬、ある記者の名前が思い浮かびました。以前から銀行オンラインを汎用機からオープン系に変えるべきだという記事を書いている人です。それにしても、MS社が銀行オンラインを出来るのか?何時、銀行オンラインの経験を持つSEを大量に採用したのか?下手すると、また話題プロジェクトの提供になるのかとも思いました。

記事を見ますとユニシスが開発を担当するようです。ユニシスは百五銀行と長い付き合いですし、銀行オンラインの経験者も豊富です。開発ガバナンスや業務知識、プロジェクト管理に致命的問題はないでしょう。

記者の常套句である、ウィンドウズなら開発運用は汎用機の半分以下という記事内容はここでは議論外としますが、今から開発に着手して2007年の稼動ということは、およそ4年のプロジェクトです。汎用機と同じか、場合によっては長いのにどうして開発費が半減するのかと疑問にはなります。ハードは低価格化が進んで、新システム投資額20%程度の比率しかありません。開発費は開発期間に比例します。わざと少人数で開発期間を延ばすようなシステムは経営ニーズがないことを意味します。新しい商品やサービス或いは戦略的なアプリ体系に変更がなく、単に汎用機をオープン系に変えるだけであれば投資効果は皆無です。後継機種がないなどの異常ケースを除けば、リスク・リターンを考えると銀行側の意図も理解できません。

勘定系と情報系を一体化させるという計画のようです。三次オンラインの時には、ハード処理能力の制約もあり、勘定系と情報系を分断させました。理想的には、勘定処理したデータを大福帳として、必要に応じて好きなように加工できれば情報系の使い易さが増すことは確かです。しかし、ウィンドウズでそれだけの処理能力を確保するには市販の標準ソフトでは不可能です。何らかの特殊ソフトを使うのでしょう。既存のソフトがあれば良いのですが、これから開発となるとプロジェクト・リスクは急増するでしょう。オープン系には銀行システム用ミドルウェアが何もありません。新規に作るとなると、NECが八千代銀行に投入したのと同じ規模の投資が必要になるかもしれません。ベンダーにとって、とても採算のとれる案件ではなくなります。

ウィンベースのPCサーバーで、大型汎用機をはるかに上回る処理能力を持つDBエンジンがあることは当HPの製品紹介コーナーで述べている通りであります。ただ、これら新テクノロジーも万能ではありません。バッチ処理やファイルIOの膨大な業務には適していますが、銀行勘定系オンラインの複雑なトランザクション管理とファイル制御は不得手のものが多いのが事実です。どのようなテクノロジーも必ず長短があり、それぞれを組み合わせて最適化するのが技術戦略そのものです。前提として整理された業務要件がありますが。

今回の開発のプライムをMS社とユニシス社のどちらが取るのか知りませんが、ユニシス社が開発責任(=リスク)を取るのであれば、それなりに検討した結果でしょうから、開発成功の勝算があるのでしょう。しかし、業界再編、共同化、アウトソーシング化でますます基幹系システム市場は縮小しています。4年後に成功裡に稼動したとしても、その頃に横展開できる先は極めて限定されるでしょう。ベンダーの営業戦略としても余り賛成できるプロジェクトとは思えないのですが。

ビジネス・ソリューションを前面に出した次期シス構想を提案するベンダーが望まれます。相変らずのプロダクト・アウト、テクノロジー・ドリブンだけでは、銀行再生に貢献できないと考えます。