不動産時価評価(国交省が取引価格公表)


朝日新聞11月27日号の記事です。国交省が、不動産の売買価格を2005年度から公開(ネット検索可能)する計画だそうです。時価会計・減損会計を採用する企業や金融機関にとっては、大きな影響が予想されます。この計画は、今年の1月10日号日経新聞でも報道され、当コメント欄でも、その影響について記述しました。その後、不動産鑑定士や行政書士の方々とお会いする時に、国交省の計画実現性を質問したのですが、皆さん口を揃えて「出来る筈がない。」と言っておられました。特に、登記を管轄する法務省と土地を管轄する国土庁、その上位組織ではあるが建築を扱う旧建設省によって縦割りされている不動産関連士族・業者の合意が難しいということのようです。私は、実現性については予想すら出来ませんが、実現したら不動産取引や投資の際に随分と役立つだろうと考えています。但し、保有不動産の評価額がより実勢に近づくことで、業績評価や税負担で大きなデメリットを受ける法人企業が出ることも確実でしょう。

国交省の計画は次のようなものです。不動産取引を行なって登記をする際に、取引価格を報告することを義務付ける。その為に法律改正も行なう。住所や取引者氏名などは公開しないが、取引時期、丁目までの地区、土地面積、建物種類、床面積などを公開する。登記される不動産件数は年間160万件ほどあるそうです。

不動産を時価評価する方法として、再取得価格、インカムアプローチ、売買事例アプローチがあります。売買事例アプローチの時に参考とされるのが、公示価格、路線価、固定資産税評価額の三つですが、どれも変動する不動産の実勢価格との乖離があります。

2006年3月期より固定資産の減損会計が義務化されますが、公認会計士協会の公開草案では、固定資産の時価を正味売却価格かDCFによる評価額の高い方とすることになっています。いずれにせよ不動産鑑定士による評価が前提でして、鑑定の際に国交省の取引価格情報が参考とされることになるでしょう。

不動産鑑定業者として大手は約20社ありますが、その内、三友システムと日本不動産研究所が最大手です。日本不動産研究所は、金融業界が共同で設立した業者で多くの金融機関が鑑定を依頼しています。金融機関が不動産担保などを評価する場合には、自社で契約している物件地元鑑定士か日本不動産研究所に依頼します。安くて、早いという利点があるものの、鑑定結果の中立性に疑問をもたれています。金融庁は、客観的・中立的な鑑定による不動産評価を強化しつつあります。現時点では、生保や信託銀行のように自社保有不動産が巨額な業態が指導を受けています。

また、ネットで鑑定を受託する業者もあります。この種の業者は有料で時価情報を提供しています。代表的なのは東京カンテイで、同社も多くの金融機関に利用されています。最近では、千人以上の司法書士や鑑定士のグループ(NPO)がJ-TRAIという簡便・廉価なサービスを開始しています。やはり司法書士のグループが設立した(訂正:司法書士グループの設立ではなく、司法書士の尾身氏が代表を勤める)ホームズ社では、銀行の不動産担保管理・評価を支援するDBと評価システムを販売して注目されています。

不動産関連のIT化は、政治的にも事業的にも制約が多いことは事実です。しかし、国富の半分を占める固定不動産が対象であり、株式ほどではないが価格変動があり、全国で2千万(区分方法によっては1億件)を越す物件が対象となります。金融関連に限っても、銀行融資における担保としての意味だけでなく、債権流動化、REIT等関連金融商品や会計決算処理などに関連して大きなIT需要があります。その反面、不動産取引に関する知識を保有するIT技術者は皆無に近いと言えましょう。国交省の公開価格情報を利用したビジネス機会が考えられます。