信託代理店(日本生命が参入予定)


日経新聞11月4日号によれば、日本生命が信託代理店に参入の予定です。

信託代理店業務は、信託銀行に顧客を紹介して手数料を受け取るものですが、日生は来年の信託業法改正により生保も信託代理店に参入できるようになると見込んでいるそうです。

記事によれば、当面は企業年金顧客を日本マスタートラスト信託に紹介することから始めます。同信託には、三菱信託やUFJ信託との合弁で29%の出資をしています。次の段階では遺言信託の代理業務も行なうことで手数料収入増大を狙っているということです。

記事の論調は、手数料収入源の多様化を図って、他の大手生保も参入する、一段と生保・信託・銀行の垣根が低くなるということです。ただ、筆者の私見では、それだけが日生の目的ではないと思います。

第一に、企業年金は手間暇のかかる割合に収益性が極めて低いことがあります。生保だけでなく、信託にとっても、収益性を高めるか撤退したい分野です。大手金融機関が共同でマスタートラストを設立した理由であります。つまり、新規機能の拡充と規模のメリット追求です。

第二に、遺言信託も採算が取れるビジネスではありません。相続資産額にもよりますが、数十万円の基本料金と相続額の0.3%程度が手数料です。1億円で60万円前後です。保険の販売手数料とは桁が違います。相続人との取引拡大というメリットも言われますが、現在の金利情勢では預かり資産を増やしても、金利コストがかかるだけです。

昔から、保険ビジネスはバンカシュランス化が進むとされています。しかし、日本では保険会社が銀行業務に参入する様子はありません。生保は既に融資機能を持っています。銀行に参入しても決済という、気を使って、コストばかりの業務では魅力のないことを知っています。日生の本当の狙いは、満期や死亡によって発生する高額な支払い金を、自らのガバナンスが効く範囲で還流させたいということでしょう。個人客でも数千万円、数億円という資金を信託という柔軟な皿に乗せることで、他の保険商品や証券商品などに誘導したいのでしょう。

以前、大手生保から地域金融機関と販売提携したいので、紹介しろと要請されたことがあります。地銀と信金を紹介しました。地銀とは即座に提携が合意されました。(合意しただけで、実際に具体化した案件は少なかったですが。)ところが、信金とは合意できませんでした。生保が、資産家の逝去情報を提供するからと申し出たのに対し、信金側は、「そんな情報は要らない。ウチは、誰が近く死ぬかという情報を持っている。」ということでした。業態の違いを痛感した事例です。

信託は典型的なストックビジネスでした。新店舗を設置しても、収支が合うようになるまで、20年前後を必要とする世界です。金融のデパートと言われ、専門家の集団と言われてきました。昨今では、当コラムでも紹介したような信託機能の特殊性を生かした金融機能のハブ化が進んでいます。この機能をうまく設計してシステムに組み込みますと、以前の少量多種で薄利という世界から、装置産業化が可能となるでしょう。今後の業務設計においては、テクニカル・アーキテクチャにおけるハブ&スポークと同様に、金融業務機能のハブ&スポーク化が進み、いかにハブを握るかの戦略が重要となるでしょう。金融サービスがアンバンドリングされる動きと合わせてIT戦略の最重要課題です。