銀行次期システム(IBMのNeFIS)


IBMは、8日に次世代金融サービス・システム(Next Generation Financial Services for Banking)を発表しました。日経の8日号が「次世代型銀行システム」として大々的に報じたソフトです。

この製品の狙いと気持ちは判るのですが、さしたる影響はないと思ったので当コラムではコメントせずにおりました。ところが数人の方から「お前は自分の出身であるIBMのことは何も語らないのか?」と叱られまして、少しコメントさせて頂きます。

これは商品アプリケーションを部品化して、パラメーター設定で商品開発を行なうものです。NECのWB21や富士通のPROBANKがアプリ・コンポネント化の概念を取り入れているものの、基本的にはオープン系等の新しいテクニカル・インフラに乗せ替えただけ(24Hrも今日では、特段目新しい機能ではありません。)なのに対して、商品機能の徹底した部品化に特長があります。しかし、これとて、日経が報じるような次世代型システムとはほど遠い、範囲限定製品です。既存システムと併設して、新商品専用の第二勘定系を作る場合には有効でしょうが。

金融商品は、期間・利回り・リスク・流動性・取引額等のエンティティで構成されます。それだけであれば部品化は容易です。しかし、中途増減額・解約などのイベントを加えて、約款に基づいたプロセスに組み込む必要があります。更に、コンプラ・チェックや事務のチェックアンドバランス機能、会計処理などが絡んできます。外目からみれば同じような商品でも、実は内部の些細な個所で千変万化です。新商品設計にNeFISを使っても、普通は既存システムと連携して処理する必要が出てきますので、どれだけ開発効率が上がるかは別問題です。

先週、国際フォーラムで開催された日本金融通信社のFIT2003に出展されていたNeFISの説明会場で質問してみましたが、明確な回答は得られませんでした。

そもそも新商品開発に時間がかかると言いますが、以前に調査した結果では、商品設計に30%、行政等との折衝に20%、プログラム開発に10%、プログラム・テストに20%、販売支援ツール作成に20%というのが開発期間の配分でした。つまり商品開発ツールが貢献できるのは延べ期間の10%程度で、それをゼロにしたところで、日経が言うように半年要した商品開発が1ヶ月になることはありえないのです。このような数字のトリックは、昔からITベンダーが良く使う手法です。店舗当り0.5人分の効率化なので、100店舗だと50人を削減できるという妙な論法もあります。最近では、オープンケイで開発すると開発期間が数分の一になるという論法が流行っています。

保険関係で、Excelを使った新商品開発支援ツールがあります。確かに簡便なツールで、かなりの数理シミュレーションが出来ます。商品エンティティの組合せ最適化には便利です。しかし、設計した機能を既存システムに組み込む作業に変わりはありません。筆者が15年ほど前に金融AIシステムを担当していた時にも同じような経験を繰り返しました。業務専門家の知識・経験をルールベース化し、整理したエキスパート・システムの開発を3人月で行なったとしても、それを実装する段階では、数十人月の作業が必要だったのです。

NeFISは、米国フィデリティが開発したCorebankというパッケージを、日本IBMが日本化するということです。来年4月にはドキュメント等の提供を開始し、来年末には本格出荷の予定だそうです。IBMを含めた各社が、数知れぬ失敗を積み重ねてきたのが外国製銀行業務パッケージです。NeFISが成功すれば歴史的快挙になるのですが。