地銀IT共同化(東邦PROBANK稼動)

 

注目されていた東邦銀行の次期システムPROBANKが9月16日に稼動しました。日経コンピュータのサイトhttp://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20030916/134789 が同日に速報しています。17日付け日経にも小さいながら記事が掲載されていました。

東邦銀行としては好奇心に満ちた目で見られてきた本番稼動が大過なく出来たのでほっとしていることでしょう。全国から福島に集結していた富士通グループのエンジニアも自宅に帰れることになります。両社は今回の稼動に自信があったのでしょう。9月9日には稼動セレモニーと共同記者会見の案内を行なっています。切り替えテストを7、8回実施して安全性を確認したということです。瀬谷頭取(DKB出身で元々富士通とは親しい方ですが)は、「厳しい報道をされ、今に見ていろとやってきた。成果を天下に示すことができた。」と感慨深そうに挨拶されたそうです。マスコミ、行政当局、IT関連他社に一矢報いたというお気持ちでしょう。

5月の大型連休の頃に再延期の発表がなかったことから、IT関連ベテランの間では、9月の稼動に大きな問題はなかろうというのが通説でした。動かすだけであれば何とかなることを知っているからです。関心は、富士通の体制建て直し策です。

第三次オンラインの際、ベンダーの銀行棲み分けは固定化するものと考えられました。四次以降は更に大規模なプロジェクトとなるので、銀行の投資余力もさることながら、技術的な移行障壁が高くなると予想されたからです。それがアウトソーシングや共同化という新しいスキームが出てきたことから、次期システム商戦は熾烈となりました。アウトソーシングは10年、20年という長期契約ですし、共同化は自行だけ脱退すれば他行に迷惑をかけるという更なる移行障壁があります。今度こそ最後の陣取り合戦だと考えるのは自然の成り行きです。既存客防衛と他社顧客のウィンバックは営業部隊の至上課題となりました。

日本のコンピュータ・ベンダーでは、営業は受注額、開発は納入額がノルマというのが一般的です。つまり開発受託契約の締結までは営業が主導権を持ちます。どうしてもウリ先行となります。まして、パッケージ・SI・共同化・アウトソーシングをセット販売する際には、実務や技術よりも営業政策が先走ってしまいます。このことは、この事業機会に参入している大手ベンダー共通でしょう。成否は顧客側の中核メンバーにどの銀行を据えるかということと、パッケージの実現可能性と再利用性に尽きるのですが。企業間の政策的関係(要は互恵取引)や価格の安さを前面に打ち出したベンダーが穴に落ちているようです。

東邦銀行の金銭的負担」は初期費用が16億円、初年度アウトソーシング料金が十数億円だそうです。PROBANK開発費を100億円(NECのBW21は200億円ともされていますが、普通はこれほど必要ありません。)とすれば、とても採算がとれません。参加銀行を増やすしかビジネスモデルは成立しません。仮にPROBANKの30%をカストマイズするとすれば、単純計算で30億円かかります。しかし、東邦銀行での十数億円が制約となるでしょう。更に30%もカストマイズするくらいなら、全く新規に開発した方が安いというのが常識です。また、カストマイズするということは、保守も多様化して規模のメリットを得られないことになります。富士通が採算ラインに戻そうとするならPROBANKをカストマイズしないことしかありません。その場合に、見込み客数がどれだけ減少するかという問題です。その意味で、16日のセレモニーに清水銀行と北都銀行の担当者が参列したことは、富士通を安心させたでしょう。

東邦銀行稼動の直前、9月11日に庄内銀行がNTTデータ地銀共同センターへ平成18年上期に移行することを発表しました。同行は長年の富士通ユーザーです。かなり以前から、庄内銀行はBeSTAに参加することが内定していると聞いていました。何故、このタイミングに発表するのかとも思いますが。筆者は5月8日の当コラムで、富士通ユーザー銀行、特に上位行に対する他ベンダーの攻勢は厳しいものがあるだろうと言いました。既に南都銀行のような動きも出ています。現在、PROBANK採用の方向にある中規模以下の地銀の動きにも注目でしょう。富士通としては、他ベンダーからの攻勢に価格勝負に出れば、損失を膨らますだけです。十数行の地銀ユーザーに戦力を分散すれば勝率を落とすだけです。

サービス主体のITビジネスにおいて、規模・成長・利益・学習のバランスを確保するビジネスモデルを構築しない限り、この事業分野での生き残りは難しいでしょう。売上シェアに根源的価値は何もないことを認識すべきなのです。富士通だけの問題ではありませんが。