損保代理店共同システム (ABCシステム稼動)


損保ジャパン、あいおい、日本興亜が進めてきた代理店共同システムが稼動したということです。日経金融7月30日号の記事です。

ABCは、Agent Business Cooperative Systemの頭文字をとったそうですが、業界には、この他に三井住友海上や生命保険グループによるISSシステムと東海上、日動、富士、共栄、日新による次世代代理店システムがあります。今回のABC稼動により、代理店共同システムは3陣営ともに出揃ったことになります。日経金融では、ISSや次世代は、まだ共同開発に取り組んでいるように書いていますが、それぞれ昨年の4月と11月に稼動済みであります。日経コンピュータ7月28日号に詳細な調査記事が特集されています。同じ日経グループで情報交換は無理でも、僚誌くらいは目を通しておけば良いのにと思います。取材力・情報力が不足すると、情報提供元の話を請け売りすることになりますので。

ABCでは、顧客管理、契約管理、収支明細、自賠責管理、事故管理、経営・営業支援などを共通機能として、保険設計、契約計上、保険料計算などは損保各社の個別機能としたそうです。共通機能の共同開発によって、損保側は開発期間を1.5年と単独の場合より半年短縮できたとのことです。費用としては一社あたり6、7億円の節約です。今後は、3社合計で5万4千の代理店に順次導入していく予定です。更に、他社との差別化を図るために個別対応機能を提供したり、自社専属代理店に対しては契約計上や保険料精算などの機能を提供することになります。(日経金融記事の要約)

保険業界の共同化は、昔の損保VANを含めて、損保会社のための共同化という意味合いが強いように思えます。業界VANを導入してネットワークだけは共通化しても、各社バラバラに代理店支援システムを提供してきました。代理店には複数のPCが並び、機能も操作方法も用語も違ったのです。今回の共同化にしても、零細な専属代理店の場合、最少機能(例えば契約計上)だけ追加すれば、代理店も損保側も事務負担が軽減できますが、乗合や大規模代理店の場合は、複数の共同システムを使って、その上に損保別の個別機能を合わせて使わざるをえません。

このように中途半端な共同化は、恐らく損保側のチャネル戦略が固まっていないことからくるのでしょう。中小代理店の切り捨てが進んでいると言われる一方で、大規模代理店の手数料は増額されつつあります。コモディティ化した商品は、細分化によって保険料そのものが値崩れしています。一方で、リスク管理コンサルティングに対するニーズは高まりつつあり、IT開発保険や顧客情報漏洩保険なども出現してきました。損害保険の対象にならないものはないといわれる位に、商品は多様化しつつあります。保険会社は、最終的には、商品設計すなわちリスク・データとその数理解析機能だけでよいのかも知れません。まさに、証券と並んで、アンバンドリング先端業界です。

このような環境変化において、マス商品はネット販売、大手企業に対してはリスク・コンサルを通じて個別商品設計ということになるでしょう。その際に、企業グループの保険統括機能を持つ大規模代理店との関係をどう考えるかは大問題の筈です。損保側からだけ見るのではなく、代理店や顧客側からの視点で共同システムを考えるべきだと思います。現在の共同システムですと、企業グループ代理店や大規模乗合代理店は、自前システムを構築して、顧客管理・契約管理だけでなく、場合によってはリスク・データを相互に提供しつつ、商品開発機能すらも持つかもしれません。そうなりますと、既存損保会社には再保険機能しか残りません。日本には2、3社あれば充分ということになります。

繰り返しますが、わが国金融機関のIT共同化は、自分達のIT投資を抑制する目的が第一で、顧客(代理店や契約者)の利便やコストは、単なる謳い文句であることが多いようです。金融業が川上中心の縦型総合機能から、水平分割機能に転換しつつあることを認識して、IT戦略を考えるべきでしょう。