日経 13/10/22

ウィンドウズによる損保業務システム(安田火災)

日経新聞(131022日号)の記事で、安田火災が金融機関としては始めて、基幹系システムを全面的にWindowsベースとすることを決定したという。

筆者の経験では、この種の記事は多くの場合は投げ込みである。特に月曜日の朝刊は、その傾向が強い。ただ、全国紙の場合は、一応裏付けを取り、話題性を配慮するので、記事内容そのものを疑う理由はない。この記事を見ると、掲載されることによってメリットを受けるのはマイクロソフトなので、恐らくMS社が原稿を書いて、安田火災が確認したものと、下らない憶測をしている。

筆者も、最近、クラサバ方式やWinベースの業務系開発プロジェクトを幾つかアレンジした。結果を見ると、期間が12分の1で費用が10分の1というのは、前提が分からないので何とも言えないが、期間が数分に1になることは間違いない。その結果、費用も同程度に節約できることになる。問題点としては、単純な業務フローを搭載するだけなら良いが、金融機関に必要なチェックアンドバランスのきめ細かいロジックを組み込んだり、連動処理や例外処理によるスキップのロジックが多い場合である。また、ミドルソフトがブラックボックスなので、そこに不具合があった場合の対応に困ることがある。更に、Winが標準でサポートしていないインターフエースの機器を接続する場合も難しい対応が求められる。これらは、業務特性と割り切りの問題ではある。

むしろ、将来の課題としてシステムライフをベンダー・ソフトの商品サイクルによって左右されることがあるだろう。安田火災の場合は、Win2000を使うのであろうが、何時、後継製品が発表されて、Win2000のサポートを打ち切られるのか。新OS対応の費用も膨大なものとなろう。現在、NTユーザーが困っている状況がいずれ再現される。昔、銀行はメーカーの希望通りには、オンラインのOSバージョンアップに応じてくれなかった。トラブルの原因になるからである。二重サポートの負担は全てメーカーが負った。業務と技術の革新速度調整は、とても難しい。

この記事を書いた記者の問題意識として、従来の開発効率の悪さがあるのだろう。確かに日本のソフト開発の効率は、国際的にみても劣悪である。経営やユーザー部門から見れば、遅い・高い・使い憎いと怨念の対象ですらある。言語の問題からユニクロ化も進まない。技術者の世代交代も進み、大きなプロジェクトを管理できる人材は第一線から急速に退きつつある。設計と開発を分断しているので、業務知識を備えたエンジニアは、殆ど入手できない。パッケージを採用しても、ビジネス・ソリューションにはならない。場合によっては、稼動すら出来ない。ハードだけは進歩するが、肝心の開発・保守の生産性は劣化するばかりである。重層化した下請け構造の下、技術者の人月単価は下方硬直したままである。ユーザーが単価を値切れば、ベンダーは工数を増やす。このような状況で、何がIT革命だ・・・というのが、心ある人間が思うことであり、記者が抱く危機感なのではなかろうか。その解決策の1つとして、オープン系を指摘したいのではないか。そのこと自体、筆者も全くの賛成であるが、一つ恐れるのは、IT素人の経営者が、「我が社もWinで作れ。そして費用と期間を10分の1以下にしろ。」とIT部門に命令することである。IT部門が、無為な時間を取られた上に、経営者から要らざる疑念を持たれる契機となる。記事を書く時には、メリット・デメリットを公平に記述して欲しいものだ。その記事によって、経営者がITを自分で考え、勉強するようになれば、それが記者の目指す方向に社会を向かわせるのでなないか。