新公的住宅ローン


最近、地域金融機関が住宅ローンを営業強化しており、それに伴ってシステム対応する事例が急増しています。その際には、新公的住宅ローンへの対応を含めることが多いようです。また、ITベンダーも、審査モデルの開発などと合わせて、大手信金あたりに数億円の投資を提案しているとの話も聞きます。

住宅金融公庫は2006年度末に廃止され、独立行政法人となります。そして例外を除いて住宅ローンから撤退し、民間が融資する住宅ローン債権の証券化や信用保証を行なうことになります。つまり、金融機関だけでなく、住宅メーカーなども個人に住宅ローンを融資します。その債権は公庫が証券化を前提に購入します。つまり融資者は即座に回収できるのです。ローンには公庫は信用保証をつけるため、証券購入者はリスクを負わずにすみます。証券化と信用保証により誰もが得な新しい住宅ローンが出現するというビジネスモデルです。10月から開始するそうです。

日経新聞6月6日号の記事によれば、新公的ローンの融資金利は2.3%程度と見込まれています。内訳は公庫の証券発行手数料が0.9%、民間業者の融資手数料が0.5%、証券の発行金利が0.9%という前提です。

公庫の手数料の中に保証料が入っているかは知りません。入っているとすれば、随分と安いものです。従来の半分以下ではないでしょうか?

民間業者は4千万円を融資するとして20万円を手にすることになります。審査して、契約手続きをして、抵当権を設定し、公庫に債権を売却する際のデューデリ・データの作成などを含めた一連の業務を行なって20万円です。通常では採算が取れないでしょう。中には、件数を稼ぐために、手抜き手続きを行なって公庫とトラブルを多発する業者が出るかもしれません。

業者が安易に貸してくれるなら、借り倒す前提で融資を受ける個人が増えるかもしれません。今日では、簡単に個人破産ができる時代ですから。

そもそも、融資する企業が住宅販売を行なっており、販促ファイナンスとして融資する場合に、物件の客観的価値を誰が保証するかという問題も出てくるでしょう。不動産には、客観的な評価尺度がないのです。単純な手口ですが、住宅販売業者と購入者が結託するとします。実質3千万の家を5千万で契約して、4千万(融資率上限が80%なので)の融資を受けます。即座に、買主は自己破産をします。家を差し押さえたとしても、住宅業者と買主の側には1千万円残ります。山分けにしても、業者には500万円の手数料と3千万円の物件を売却した利益が入ることになります。

このようなことを防止するために、公庫は業者の信用格付けと個別債権のデューデリジェンスを徹底するしかないでしょう。それで、0.9%の手数料は、採算が取れるでしょうか?

今回の制度を誹謗する気はありません。低金利で、誰もが儲かる仕組みであって欲しいだけです。審査や各種業務処理においてITを活用できる場面は数多く考えられます。それも、債権単位の管理でよいのですから、従来のような巨大・複雑なシステムは不要です。エクセルのお化けのようなPCツールもありますので、IT投資は桁違いで抑えられるでしょう。要は、複数組織を跨る業務を徹底的に効率化することと、情報の信憑性をいかに担保するかの問題だと思います。

これらを、明確にしないまま参入するには、新公的住宅ローンは、少し安易に過ぎるビジネスモデルだと思えてならないのですが。証券化や信用保証には、充分な情報と、それを解析する能力が前提となります。新独立行政法人が、それらを保有していることを期待しています。