オープン系基幹システム (八千代銀行・NEC)


6月10日にNECはユーザーである八千代銀行副頭取同伴で、記者会見をおこないました。5月4日に稼動した同行のオープン系基幹システム(NEC商品名BankingWeb21)のお披露目が目的です。会場の国際フオーラムには、30名前後の記者が集まりましたが、通常より大分少なかったようです。金融担当の記者は、翌11日に予定されていた衆院財務金融委員会でのりそなや監査法人トップの参考人招致に目を奪われていたことが影響したのでしょう。機械フラブの記者達にとっては、BW21が動いたという程度ではニュースバリューがありませんから、会見の日取りが不運でした。実際、日経では13面のハイテク企業面で小さく報道しただけで、私も知人から教えられるまで気づきませんでした。

加えて、説明したNEC幹部のマナーも記者達に悪い印象を与えたようです。同社のトップは、マスコミに傲慢な態度を示したり、ついつい短絡的な表現をしてしまう習癖があるようです。過去にも、財界年始交換会で、「これからは、ITサービスの時代だ。安定した収入を確保できるし、利益率も高い。特に官公庁関連は魅力的だ。」などと発言し、多くの官公庁の怒りを買ったことがあります。当時、私は「何を今頃、サービス・ビジネスなどと言っているのか。それも、お役所さん、あんた方は、おいしいお客ですね・・・などと良く言うものだ。」と唖然とした記憶があります。NECの広報は、トップに対してマスコミ応対技法の特訓を行なう必要があるかと、余計な心配をしています。

日経コンピュータのサイトが、この記者会見とBW21について速報を掲示していました。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20030610/1

BW21の開発にNECは200億円以上を投入したそうです。八千代は、30億円を負担して、今後10年間のアウトソーシングで100〜200億円を支払うようです。開発開始から延べ5年を要したとのことですが、オープン系謳い文句の低コスト、短期開発とはほど遠い実状です。地銀大手の汎用機を使った第三次オンラインでも、開発は3年から4年で、開発費は100億円前後ですから。

八千代銀行にとっては安い買い物だったでしょう。これほどの割引を受けられたのですから。同行は昔からベンダー・オープンを目指すのが特長でした。銀行業界では三井銀行に次いで二番目に普通預金オンライン化を実施し、世代の替わる都度にベンダーを変えるという珍しいベンダーマネジメントを行なってきました。ベンダーにとっては、他社からの切り替えは誉れですから、八千代は、その都度、有利な契約条件を確保できたことでしょう。

NECがBW21に200億円以上の投資をしたとすれば、資金の余裕に驚くとともに、何に使ったのか興味が湧いてきます。担当専務は、「これで、オープン系基幹システムで5年リードした。」と豪語したようですが。他社が追随するのに(恐らくLinuxに向かいますので、追随することはないでしょうが)5年を要するような機能を組み込んだのでしょう。

NECは、住友銀行の基幹系を獲得して以降、金融業界向け営業の強化を図ってきましたが、目立つ成果は上がっていません。金融関連に特色のある独立系IT企業へ提携を申し込むケースをしばしば耳にします。そんな折に、寡占企業のI、F、Hが手を出さないオープン系基幹システムを戦略商品としたのでしょう。

今後、大東、東日本、大光、びわこ、トマト、愛媛、高知、三重の8行に展開される予定です。そのうち、大光、東日本は富士通機のKDCから、高知は日立からの切り替えです。共通部品化を図ったとされるパッケージが、どこまでパッケージとしての移植性を発揮できるかがポイントとなります。NECとすれば、八千代と同様に1行当り30億円を支払ってもらえれば、開発費はおおよそ回収できることになります。個別行が勝手放題に要求する個別仕様を、どこまで顧客負担で対応できるかが、BW21ビジネスの成功の鍵となります。一方で、岩手、大垣共立、沖縄、関西のNEC大手地銀ユーザーは、NTTデータへの委託を決めた岩手を除けば、動向を鮮明にしてはいません。地銀界におけるNECビジネスの成否は、残り3行が握ることになります。