日経金融 13/7/5

プライベート・バンキング・ビジネス

外銀によるプライベート・バンキング戦略を紹介した特集記事である。
我国には、金融資産一億円以上の富裕層が40万人とも、50万人とも、100万人とも言われている。預り資産一億円の顧客1人と100万円の顧客100人とでは、事務効率、資産運用効率は大きく差があるので、サービスプロバイダーとしての金融機関にとっては、前者が魅力的な市場であることは間違いない。大手証券会社の事例では、全顧客の3%が全手数料収入の50%に貢献しており、一顧客当り年間手数料は200万円になる。一方、その他97%の顧客は4万円程度の手数料である。顧客セグメントの特性がこれほど異なるので、マーケテイング・モデルは当然違って来る筈だが、これまでは、同じ商品を同じ価格で販売し、差とすれば担当営業の密着度だけであった。
我国、金融業界は、得てしてマスを対象としたEconomy of Scopeのビジネス・モデルが社内でも、社会的にも注目され続けている。ただ、最近、金持ちになる方法を書いた書物が続けてヒットしており、何故だか、筆者の所にも、資産運用のコツをテーマとした執筆依頼が舞込んでくる。(当然ながら丁寧にお断りする。)
20年以上も意識しているのだが、我国には、全くと言って良い程、富裕層に関する資料・書籍がない。資料としては、高額納税者リストが市販されている程度である。書籍も、1998年に三冊出版されただけである。その内容は、事業承継やFPの重要性・役割を説いた程度のものである。米国では、金持ち(この表現自体に差別意識があるのかも知れない。)は、社会的成功者で賞賛されるべき存在だという考えからか、専門の研究者がいて、様々な切り口から調査分析されている。それに反して、日本では富裕層自身に成金視されたくない意識や、金融機関側もマス顧客の反発を恐れているのか、全く研究されていない。一部に相続や事業承継を中心とした信託サービスやコンサルテイング・フアームがあるが、個人プレーの域を脱していない。
我国には、自称FP,NPO認定FPが数万人いる。ただ、ほぼ全員が金融機関の従業員である。ヒモ付きコンサルには、何と言おうと大きな制約がある。
ある大手銀行のプライベート・バンキング事業開発チームとミーティングをしている時に質問をしてみた。「この中に、自分或いは親しい親戚で金融資産一億円以上の人がいるか?」答えはゼロだった。思わず「貧乏人に金を持つ悩みがわかる筈はない。このチームは人選からして失敗だ。」と悪口を叩いて大笑いになった記憶がある。マスコミ的には、IPO長者や土地成金、オーナー経営者が注目され易いが、継続的に高額納税している程ではない。本当の富裕個人は意外と身近にいる。金融機関は個別には押さえているが、組織だった対応をしていない。独立系の資産運用コンサルか、カストマイズド・ポータルによる客観的・総合的(この場合は、総花でも良い。)
富裕個人ビジネスは、魅力的ニッチ(隙間という意味ではない。)だと思うのだが。